雑記 2025.10
久々にものを書いている。
いつもどんなふうに文章にしていたっけと恐る恐る書いている。
更新をやめた4、5ヶ月ぐらいの間にしていた事、正直細かに書くほど中身はない。仕事・栄養補給のためだけの食事・足しにもならない仮眠の3つをひたすら繰り返し、思考することを許されない機械になる生活を送っていた、言葉にするとそれだけだった。
しかしそれだけで、みるみるうちに生きる気力を削がれてしまった。多くの人も同じ状況に置かれたらそうなるかもしれない。
趣味ができないとか休む時間がないとかそれ以前の話で、最小限の耐力でとりあえず体は動いている状態、ともすれば、少しでももうダメだと思ってしまったが最後自分の命を軽んじるほかなかった状態だったと言うのか。
崖から落ちる寸前の危機一髪というのとは全く別物の、下手すれば簡単に死んでた、と思わせる生命の危機がすぐ間近に、ずっとあった。
自分の限界がどれ程か知れたとは言え、どちらかというとしてはいけない類いの人生経験だった。次似たような道があっても(またその道がどれだけ魅力的に見えても)自分の手には余りすぎるから、ゆめゆめ進まないようにという教訓ができた。
そんなこんなでボロ雑巾になった身体を労りつつ過ごして、やっと今、ほんの少しだけ思考を再開し始めている。
一度止めてしまったここの活動をまた再開させるためのやる気はもう出てこないかもなと半ば諦めていたが、身体だけでもひとまず最悪な状態から脱すること叶えば、こうやって何か書こうとして、自ずとサイトを開く余裕も出てきてくれた。
こればっかりは人間が単純な作りをしていて助かったと感謝しつつ、これも多分、回復する力があればこそだろうとも思う。
ただ、投稿を続けていた頃の随想欲や創作欲みたいなものは、まだ来ない。
文章を作るやり方すらすっかり忘れてしまっていたし、今絞っても最悪の機械期間の出涸らししか出せないぐらい中身はすっからかんなので、多分もう少し時間をかけて色々と吸収する必要があるのだろう。
と理解していながら、以前のように書/描けないというのは、どうしても気を逸らせる。心身への過度な負担と、そこから正常な状態に復帰させる力の衰えを、兆し程度でも感じてしまった。総じて若さと呼ばれる心身の耐力や能力が恒久では無いこと、この先あらゆる事を続けるのが段々と難しくなっていく予感に怯えて、まだ元気のあるうちに、と焦っているのが分かる。
しかし、こういう時に焦って無理に捻り出したら却って余分な力を使ってしまうか、碌でもないもんしかできないことを同時によく知っている。
書く気が湧いたことの嬉しさも書けない焦りも、この場所への投稿を続けたいという原動力から生まれているには違いない。
そのうち予期せず戻って来るだろう、いざの時のために、一旦これはそのままにしておいて、しばらくは取るに足らない些細な事だけ、そして余裕がある時にだけ少しずつ残そうと思う。
追い立てられる時期はもう終わったんだから、せめてゆっくりいきたい。
そういえば、最近(勿論なるべくゆっくりと)やった仕事で、シベリアトウヒの林を描いた。
基本、何か描くにあたっては、作業に入る前に資料を見て回りなんとなくの知見を得る。
ごく簡単に言うと、トウヒの木はマツ科の仲間で、同じマツ科のモミの木と一見して非常に似ている。写真で見ても本当によく似ていた。
見分ける特徴として、トウヒの枝葉は下向きに垂れるように生えており、球果(松ぼっくり)が細長く、これもまた枝下に垂れ下がるといった性質がある。
写真や資料を睨みつけながら描いていたおかげでこういうことを覚えた。
その甲斐あってか、ある日の通勤途中、公園の中を自転車で走っていた時にトウヒのような木があることに気づき、思わず自転車を停めた。近寄って枝や葉の辺りを観察すると、やはりそれはトウヒで間違いなかった。
前だったら横目に見ただけで、何も分からないまま多分松の木だと思い込んで終わりだっただろう。ちゃんと見分けて「トウヒの木だ」と理解ができた途端、文字通り目前の視界が広がり、自分が認識できる範囲がひと回り大きく開けたようだった。
牛歩だが、確かに知ることを思い出してきている。純粋にそれを嬉しい、面白いと思える精神もまた息を吹き返してきている。
長らく壊死していたそれを思い出して、本当に久しく、しがらみも重りもない何とも晴れやかな気持ちになれた。
この知識もまたそのうち忘れてしまって、これは松の木なんだったっけとか言い出すと思うけど、知識を得たことで感動が起こったという事実は必ず無意識下に残っている。いつかふと感動を覚えた際、無意識下に埋まった知識も一緒に呼び起こされるかもしれない。私にとって決して無駄にならなかったことがこんなにもありがたい。
取るにならない些細な事で、いとも単純に突き動かされてしまう才能を誇りに持つことも教訓のひとつにしようと思う。
0コメント